イジワル副社長に拾われました。
思わず眉をひそめて白井さんの方を向くと、ちょうどこちらに目を向けたらしい彼とパチリ、と目が合った。

「何話してたんだ? 俺の悪口か」

「そ、そんなことありませんよ!」

思わず顔の前でブンブンと手を横に振ったけれど、

「……思いっきり否定するあたり、図星か」

フッ、と静かに笑われて、撃沈。

「未来、今から俺、会社戻るから。咲良ちゃんによろしく伝えてくれ」

「了解。気をつけてね」

「ああ。あと、コイツのこと、頼むな」

ポン。と白井さんの手が私の頭に乗り、一瞬にして離れていく。

「じゃあ明日から頼むな、桐原。お疲れ様」

「お疲れ様でした……」

さっき頭に残った手を、名残惜しいと感じるのはなぜ?

「お疲れ、未来」

「お疲れ様」

白井さんと笑顔であいさつする大西さんを見て、胸が痛むのはなぜ?

「じゃあ、撮影終わったら約束通り、飲みに行こうか?」

「は、はい。よろしくお願いします」

今はまだ、この気持ちの正体はわからないまま。

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