イジワル副社長に拾われました。
「どうせ私は子どもですよ」

頬を膨らませて、選び抜いたチョコトリュフを口に入れる。

「あー、やっぱり美味しいっ!」

上品な甘さとカカオのいい香りが口いっぱいに広がって、思わず声を上げてしまう。

「未来の言うとおりだな」

「未来さんの?」

「ああ、飯行ってもいっつも美味そうに食ってるって」

「確かによく言われます、『琴乃ちゃん、いっつも幸せそうにご飯食べてるから、一緒に食べてて気持ちいいわ』って」

「ふーん。そんなに幸せそうに食ってんのか、桐原」

「自分ではわかんないですけどね。鏡見ながら食べているわけではないですから」

「そうか……」

そうつぶやいて、しばらく白井さんは何かを考えるそぶりを見せていたのだけど。

急に思い立ったような顔をして、私の名前を呼んだ。

「はい?」

「お前、今週の土曜日ヒマか?」

「土曜日ですか? 未来さんのメイクアップ教室のお手伝いで日中仕事ですけど、夕方には終わる予定です」

「じゃあ、終わってから飯行くか」

「えっ?」

突然の白井さんからのお誘いに、思わず声が裏返る。

「なんだよ、俺とじゃ不満か?」

「い、いえ。そうじゃないですけど。ちょっとびっくりして……」

「この間、美味そうなもつ鍋の店見つけたんだけどさ、鍋をひとりでつつくのもなあって思ってたんだよ」

「一緒に行ってくれる人、いないんですか? 例えばほら、彼女さん、とか……」

遠慮がちに発した私の言葉に、白井さんは苦笑いを向ける。

「ああ、そっちね。それはここしばらくいないから」

「そ、そうなんですか」

それは嘘か誠か。白井さんの様子からはうかがうことはできない。

「で、どうすんだよ。行けるのか?」

白井さんの声に、はっと我に返る。

「だ、大丈夫です」

「そっか、じゃあ終わる頃見計らって会社に来るから。連絡するまで待ってろ」

「はい、よろしくお願いします」

私の返事に、白井さんは満足そうに微笑んだ。



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