イジワル副社長に拾われました。
ここで隠し通せるほど、私は大人じゃない。観念して、康太郎さんと視線を合わす。

「……どうしてわかったんですか?」

「ひとつ、部屋に入ってきたときの無駄に元気のいい挨拶。ふたつ、さっきも指摘したけど、目が腫れてる。そして最後に、これ」

目の前に差し出されたのは、康太郎さんの携帯電話。

「え?」

「いいから、読んでみて」

促されてメールを読む。

未来さんから送られてきていたメールには、『康太郎さん、今日外出の予定ないですよね。私が帰ってくるまで絶対琴乃ちゃん、引き留めておいてくださいね。終業後に話したいことがあるから』そう書かれてあった。

「こんなメールを今日は終日外出している大西からもらったら、何かあったとしか思えないだろ?」

「……完敗です」

「で、どうする? 俺に話してみる? それとも、大西に何か伝言があるなら伝えるけど?」

力なく笑った私に、康太郎さんは選択権を与えてくれた。

「聞いてくれますか?」

「……了解。じゃあ今日の昼、一緒に行こう。それまではいつも通りに業務に励むこと。出来るね?」

「はい」

康太郎さんの言葉に、私は勢いよくうなずいた。






昼休みになり、ふたりでエレベーターを待っていると、「桐原!」と後ろから声を掛けられた。

振り返らなくてもわかる。あの声は白井さんだ。

ビクッ、と肩を震わせた私を見て、康太郎さんは何かを察したのだろう。

「すまん、航。俺たち急いでるんだ、また後でな!」

そう言って私の体をエレベーターに押し込んで、素早く『閉』のボタンを押した。

扉が閉まる瞬間、苦しそうな顔をした白井さんと目があったけど、すぐに閉まっていく扉に遮られた。

「ありがとうございます」

「いえいえ。でもこれで、話聞く前になんとなくだけど、桐原さんの元気がない理由がわかってきたよ」

「そんなこと言っても、康太郎さんのことだから察しているんじゃないんですか?」

「ハハ、バレた?」

茶目っ気たっぷりに微笑む康太郎さん。

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