イジワル副社長に拾われました。
私は割り切って、お金も出さずにお店を出た。
その日はお店を出た足で、社内で唯一私たちの関係を知ってた同期の千絵(ちえ)の家に行き、飲み明かした。
散々愚痴って、食べて、飲んで。
まだ少しだけ、気持ちの整理がつかない部分もあったけれど。
終わってしまったことは仕方のないことだから、と自分に言い聞かせた。
そして週が明け。
私を待っていたのは、予想もつかなかった事態だった……。
――「ねぇ、聞いた? 桐原さんの話」
――「ヒドイよねぇ。後輩の恋人誘惑するだなんて」
それ、逆なんですけど。
寧ろ、誘惑されて略奪されたのは私なんですよ。
と、言えるはずもなく、私はヒソヒソ聞こえてくる自分の噂話に頭を抱えた。
どうやら勤と希美ちゃんが婚約をした、という話と共に、なぜかそんなふたりの仲を桐原琴乃が邪魔をした、なーんていう話に膨れ上がっているようで。
すっかり私は『次期社長を誘惑した悪女』として名前が知れ渡っていたのだった。
「ちょっと、琴乃! このまま黙ってていいの!?」
昼休みになった途端、デザイン部に駆け込んできた怒り心頭の千絵。
「……いいよ、別に。人の噂も七十五日。気にしなかったら誰も話さなくなるって」
「でも……!」
「いいの。だって千絵はその話がデマだってわかってくれているでしょ?」
「うん」
「それにね、千絵だけじゃない。デザイン部の人たちも、私がそんなことする人じゃないってわかってくれているの」
噂を聞いて、上司の新田(にった)さんが開口一番こう言ってくれた。
「桐原の性格で、人のモン奪い取るっていうのは有り得ないな」
その言葉に賛同するように、デザイン部の先輩・後輩みんなが声を掛けてくれた。
「確かに。どっちかっていうと取られる方だよね、桐原は」
「琴乃さん、優しいですもんね」
「桐原さん、こういうのは無視無視。黙ってたらいいからね」
「そうそう。何かあったら私たちが守ってあげるから」
次々に私を励ましてくれるみんな。
それがとても嬉しくて、頑張れそうな気がしていた。
「仲間が信じてくれている。それだけで私は十分だから」
「琴乃……」
その日はお店を出た足で、社内で唯一私たちの関係を知ってた同期の千絵(ちえ)の家に行き、飲み明かした。
散々愚痴って、食べて、飲んで。
まだ少しだけ、気持ちの整理がつかない部分もあったけれど。
終わってしまったことは仕方のないことだから、と自分に言い聞かせた。
そして週が明け。
私を待っていたのは、予想もつかなかった事態だった……。
――「ねぇ、聞いた? 桐原さんの話」
――「ヒドイよねぇ。後輩の恋人誘惑するだなんて」
それ、逆なんですけど。
寧ろ、誘惑されて略奪されたのは私なんですよ。
と、言えるはずもなく、私はヒソヒソ聞こえてくる自分の噂話に頭を抱えた。
どうやら勤と希美ちゃんが婚約をした、という話と共に、なぜかそんなふたりの仲を桐原琴乃が邪魔をした、なーんていう話に膨れ上がっているようで。
すっかり私は『次期社長を誘惑した悪女』として名前が知れ渡っていたのだった。
「ちょっと、琴乃! このまま黙ってていいの!?」
昼休みになった途端、デザイン部に駆け込んできた怒り心頭の千絵。
「……いいよ、別に。人の噂も七十五日。気にしなかったら誰も話さなくなるって」
「でも……!」
「いいの。だって千絵はその話がデマだってわかってくれているでしょ?」
「うん」
「それにね、千絵だけじゃない。デザイン部の人たちも、私がそんなことする人じゃないってわかってくれているの」
噂を聞いて、上司の新田(にった)さんが開口一番こう言ってくれた。
「桐原の性格で、人のモン奪い取るっていうのは有り得ないな」
その言葉に賛同するように、デザイン部の先輩・後輩みんなが声を掛けてくれた。
「確かに。どっちかっていうと取られる方だよね、桐原は」
「琴乃さん、優しいですもんね」
「桐原さん、こういうのは無視無視。黙ってたらいいからね」
「そうそう。何かあったら私たちが守ってあげるから」
次々に私を励ましてくれるみんな。
それがとても嬉しくて、頑張れそうな気がしていた。
「仲間が信じてくれている。それだけで私は十分だから」
「琴乃……」