イジワル副社長に拾われました。
こうして誤解の解けた私と未来さんは、テーブルに溢れた美味しい料理で女子会を楽しむことにした。

「っていうか琴乃ちゃんもおかしいよね。どうやったら私と航が付き合ってるっていう風に思うかなあ」

「だって横に並んでたらお似合いですよ、美男美女で」

「友達とか仕事仲間としては気が合うんだけど、恋人は無理だな」

「え、どうしてですか?」

「だって、似すぎてるんだもの」

「似すぎてる?」

「そ。ふたりともプライドが高くて完璧主義者。そんなふたりが付き合ったら、お互い譲らずでケンカになっちゃうわよ」

「そうですかねぇ」

「そうよー」

未来さんが、ローストビーフに手をのばす。

私も横にあったほうれん草のキッシュを口に入れた。

「私もだけど、航も素直じゃないしね。琴乃ちゃんにいっつも意地悪してるでしょ? あれだって、好きの現れだと思うもの」

突然のびっくり発言に、思わず固まった。

好きの現れ?

白井さんが? 私を?

「……いやいや、未来さん。それはないですって」

「そっかな。航が琴乃ちゃん連れて撮影スタジオに来たときから、このふたりいい感じだなあって思ったよ?」

「白井さんと私、あの日が初対面でしたけど?」

「だから、珍しいなと思ったの。初めて会った子に仕事まで探して、連れてきた航がね。そのときから琴乃ちゃんは、航にとって特別な子だと思うけどなあ」

未来さんの言葉に胸がトクン、と高鳴った。

期待してはいけないと思っている自分とは反対に、もしそうだったらうれしいと思う自分がいる。

「だからさ、琴乃ちゃんも素直になって航に気持ち、ぶつけてみたら?」

「……えっ!?」

「バレてないと思ってた? 私も案外、勘はするどいのよ?」

余裕たっぷりの笑みで笑う未来さん。

康太郎さんといい、未来さんといい、なんで私の気持ちはこんなに周りに知れ渡ってるのっ。

そう思っていたことも見抜かれてしまっていたらしく、

「だって琴乃ちゃん、航を見る目が恋する乙女だもん」

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