イジワル副社長に拾われました。
となると、私、お邪魔虫じゃないの!

今更ながら自分の存在がお邪魔なことに気づいた私は、慌てて上着とカバンを手に持って立ち上がった。

「え? 琴乃ちゃん何してるの?」

「帰る準備ですけど……」

「どうして? 今日はうちで女子会しようって話になったじゃない」

「だって、宗介さんせっかく帰ってきたし、私、お邪魔虫じゃないですか」

「何言ってるの? 今日のお邪魔虫はむしろ宗介よ」

ピシっ、と人差し指を立てて断言する未来さん。

「ひでーよ、未来」

「あら、お風呂もう出たの?」

そこへ、タオルで頭を拭きながら、宗介さんが登場した。

「宗介さん、すみません。私本当に帰りますから」

「なんで? 帰る必要ないじゃん」

その言葉に思わず固まってしまう。

宗介さんまで一体何を言い出すのやら。

ここはどう考えても、私が帰る必要あるでしょう。

帰宅後、ふたりは甘い甘い時間を過ごすべきでしょ!

と思っていたら、宗介さんがニカっと笑った。

「シロの話してあげる、って言っても琴乃ちゃん帰っちゃう?」

「シロ……?」

「琴乃ちゃんには航って言ったほうがわかりやすいかな?」

「……シロって、白井さんのことなんですか?」

「うん、そう。オレが黒岩で、シロが白井じゃん? で、ふたりでよくつるんでたから、周りからコンビみたいにシロとクロって呼ばれてたんだよ」

「びっくりしたでしょ? 私も最初に聞いたとき、驚いたのよ」

「はい、白井さんがそんな風に呼ばれるなんて、なんだか想像できません」

「最初は嫌がってたけどね。でももう諦めて、高校から大学までそうやって呼ばれてたよ」

宗介さんは、冷蔵庫から取り出したビールをゴクゴクと気持ちよさそうに飲んでいる。

「琴乃ちゃんのことはね、未来から聞いてたんだ」

「未来さんから?」

「うん、『すっごいいい子が入ってきた』ってね」

宗介さんの横で、未来さんがうなずいてくれていて、私は少し照れくさくなってうつむいた。

「宗介には航と琴乃ちゃんが出会ったいきさつも少し話しててね。私たちの間では、ふたりがまとまればいいねって話をしてるんだ」

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