イジワル副社長に拾われました。
「ねー」

顔を見合わせたふたりが、同じタイミングで「あっ!」と声を上げた。

そして、何か企んでいる顔を私に向ける。

なんだか嫌な予感がして、思わず後ずさる私の肩を未来さんがガシっとつかんで離さない。

そして、ニヤリと笑った。

「琴乃ちゃん、今から航、呼び出しましょうよ」

「白井さんを?」

「シロ、絶対いい顔すると思うんだよなあ」

腕を組んでうなずく宗介さんも、悪い顔をしている。

「でも、白井さん、今日忙しかったんですよね。康太郎さんが言ってました。午後からは会議が詰まってるって」

「詰まっててももう十時過ぎよ? どれだけ長引いてても終わってると思うわ」

「そうそう、だから琴乃ちゃん、携帯出して」

楽しそうなふたりにこれ以上抵抗することができず、私は渋々カバンの中から携帯電話を取り出そうとした。

「あれ?」

「どうしたの?」

「携帯、家に忘れてるみたいです……」

そういえば、日中、一回も携帯電話を見た記憶がないことに気づく。

そっか。忘れてたから見てないんだな、私。

持ってない以上は連絡取れないし、きっと未来さんと宗介さんも諦めてくれるよね。

……と思った私が間違いだったようで。

「じゃあ、オレから連絡すっか」

「まだ航に帰国したこと連絡入れてないの?」

「うん、忘れてた」

「忘れてた、じゃないわよ。航だって心配してくれてたんだから、今すぐちゃんと連絡しなきゃ。っていうか、宗介のおかげで航と琴乃ちゃんこじれちゃってるんだから、そのあたりもちゃんと謝らないと!」

「え? マジで?」

「そうよ。ふたりで食事に行く約束、すっぽかしちゃったんだから、航」

「うっわー。ごめん、琴乃ちゃん」

「いえ、それは別に終わったことなので……」

「それを謝るのも兼ねて、今うちに琴乃ちゃんいるって呼ぶわ」

宗介さんの言葉に、思わず固まってしまう。

今、なんと言いました?

白井さんを呼ぶ、って言いませんでしたか?

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