イジワル副社長に拾われました。
あたふたする私をよそに、宗介さんは鼻歌を歌いながら携帯を操作していく。

「よし、送信、っと」

「ねぇ、宗介。なんて送ったの?」

「んー。『心配かけてごめん、帰ってきたよん。顔を見たければうちに来い』って」

「反省感がまったくない文章ね。っていうかどこまで上からの文章書いてるのよ」

「いや、でもアイツ絶対来るぜ。なんだかんだ言ってもオレのこと、好きだもん」

「はいはい」

ばっさりと未来さんに切り捨てられても、宗介さんは平然としている。

そんな中、私はひとり、まだあたふたとしていた。

白井さんからのメールにも返事をしていない私。

それだけじゃなくて、白井さんのことを好きってことにも気づいてしまってから、しっかり顔を合わすのも初めてになる。

一体、どんな顔をして会えばいいの?

ああ、どうしよう。

「大丈夫よ、琴乃ちゃん。いつもどおりにしていればいいから」

「……また心の声、出てました?」

「うん、少しだけね。でもホント、いつもどおりでいいのよ。それで、航の話、ちゃんと聞いてあげて」

優しい未来さんの言葉に、私は小さくうなずいた。






それから十分くらいがたった頃だろうか。

ピンポーン、とインターホンの音が部屋に鳴り響いた。

「おっ、来たな」

宗介さんがうれしそうな声を上げて玄関へと出ていく。

「クロ、お前はホントに適当すぎる。どれだけ周りが心配したと思ってるんだ」

「だから謝ってるだろ。ホントに悪かったって」

「未来だって、すごい心配してたんだぞ」

「うん、わかってる。で、お前にも迷惑かけたってことも聞いてるから」

「俺に?」

「うん、女の子との約束、すっぽかせちゃったんだろ?」

そのタイミングでドアが開き、宗介さんの後ろから、白井さんがリビングに入ってきた。

すでにお風呂に入った後なのだろうか。

いつもセットしてある髪が無造作になっていて、落ちた前髪がサラサラとなびいている。

上下黒のスエットに黒縁メガネを掛けた白井さんの姿は、完全にオフモードになっていたんだと感じさせられた。

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