イジワル副社長に拾われました。
黙って白井さんを見つめていると、その視線に気づいたのか目が合い、瞬間白井さんの目がびっくりしたように見開いた。

「桐原!? どうしてここに」

「今日は私と女子会の予定だったのよ。そこに宗介がケロっと帰ってきちゃって」

「こ、こんばんは……」

私の挨拶に、白井さんは黙ったまま。微動だにしないその姿に、私は不安を募らせる。

「こんばんは、じゃねぇよ」

「え?」

「お前、人がメール送っても電話しても出ないのに、なんで平然と挨拶しやがる」

「ごめんなさい。私今日、携帯家に忘れちゃったみたいで、一度も確認してないんです」

「はあっ!?」

ムスッとしていた白井さんの顔が、ますます不機嫌になっていく。

「だから、白井さんがそんなに連絡してくれてるなんて、知らなくて」

「まあまあ、シロ。女の子相手にそんなムキにならなくてもいいじゃんか」

肩にかかった宗介さんの手をピシッと払って、白井さんは更に不機嫌顔。

「ったく、誰のせいでこうなってると思ってんだよ」

「だから謝ってるだろ。ホントに悪かったって。な?」

手を合わせる宗介さんの顔を一瞥したあと、フン、とそっぽを向く白井さんの顔は今まで見たことのない、まるで子どもみたいな表情。

なんだか新鮮だなあと思いながらふたりを見ていたら、私の耳元で未来さんがささやいた。

「面白いでしょ、このふたり。いつもこんな感じなのよ」

「びっくりしました。白井さんもあんな顔するんですね」

「惚れ直しちゃった?」

「……っ、未来さんっ!」

もう、未来さんってば。絶対私の顔、真っ赤になってるよ。

熱くなった頬を手で隠して白井さんのほうを見れば、絡まる視線。

見つめあうこと数秒、白井さんが口を開いた。

「……帰るぞ」

「え?」

そう言うと、私の腕を引っ張って、立ち上がらせる。

腕をつかんでいない反対の手で私の荷物を持った白井さんは、あっけにとられている宗介さんと未来さんに目を向けた。

「じゃあな」

「……あ、ああ。迷惑かけて悪かったな」

「まったくだ。未来にもちゃんと謝っておけ」

「わかったよ」

宗介さんはニカッと笑って親指を立てた。

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