イジワル副社長に拾われました。
「今日はそういうのなし。なーんかちょっと、深刻みたいだし」
手にしたワインを一口飲んで、未来さんが私の顔を見つめる。
「ねぇ、琴乃ちゃん」
「はい」
「琴乃ちゃんは、なんで前の仕事に就いたの?」
「それは、美大に通ってて、せっかくだし学んできたこと仕事に出来たらなと思ってて。大きなとこは軒並み落ちたけど、あの会社だけ拾ってくれたので、それでです」
「そう。じゃあ、なんで美大に進学したの?」
就職の話から、まさか大学進学の話になると思っていなくて、私はびっくりして目を丸くする。
大学を選んだ理由、一体何だったっけ?
頭の中で高校時代を思い出していく。
ああ、そうだ。
「……昔から絵を描くのは好きだったんです。地元の写生大会とかでも賞もらったりしてて。で、高校のときに美術部に入って、顧問の先生がコンクールとかに出展して賞もらってる先生だったんですね」
「へぇ。先生がよかったんだ?」
「はい。で、進路に迷ってたら、美大に行くためのデッサンとか受験対策をしてくれて。それで、進学しました」
「ほかにやりたいことはなかったの?」
「恥ずかしながら。とりあえず進学したいなあ、先生が薦めてくれてるし、美大に行こうかな、ってくらいで」
言いながら、自分自身が恥ずかしくなってくる。
思い返してみれば、確固たる意志を思って何かをやり遂げるってこと、私、したことないじゃない。
進学だって、就職だって、とりあえず。なんとなく。
「……とりあえず、なんとなくだから、前の会社クビになったときも何も言い返せなかったのかも。恥ずかしいですね、私」
「そんなことないわよ。誰だってそんなはっきり真っ直ぐ生きているわけじゃないんだから」
苦笑いをする私を、未来さんが励ましてくれる。
「じゃあ琴乃ちゃんは、今までに『どうしてもこれがしたい』って言うのはなかったんだ?」
未来さんの言葉に軽くうなずくと、「そっかあ」と独り言のように未来さんはつぶやいた。
「俺は、さ。就活、失敗してんだよね」
すると、さっきまで黙っていた宗介さんが口を開いた。
手にしたワインを一口飲んで、未来さんが私の顔を見つめる。
「ねぇ、琴乃ちゃん」
「はい」
「琴乃ちゃんは、なんで前の仕事に就いたの?」
「それは、美大に通ってて、せっかくだし学んできたこと仕事に出来たらなと思ってて。大きなとこは軒並み落ちたけど、あの会社だけ拾ってくれたので、それでです」
「そう。じゃあ、なんで美大に進学したの?」
就職の話から、まさか大学進学の話になると思っていなくて、私はびっくりして目を丸くする。
大学を選んだ理由、一体何だったっけ?
頭の中で高校時代を思い出していく。
ああ、そうだ。
「……昔から絵を描くのは好きだったんです。地元の写生大会とかでも賞もらったりしてて。で、高校のときに美術部に入って、顧問の先生がコンクールとかに出展して賞もらってる先生だったんですね」
「へぇ。先生がよかったんだ?」
「はい。で、進路に迷ってたら、美大に行くためのデッサンとか受験対策をしてくれて。それで、進学しました」
「ほかにやりたいことはなかったの?」
「恥ずかしながら。とりあえず進学したいなあ、先生が薦めてくれてるし、美大に行こうかな、ってくらいで」
言いながら、自分自身が恥ずかしくなってくる。
思い返してみれば、確固たる意志を思って何かをやり遂げるってこと、私、したことないじゃない。
進学だって、就職だって、とりあえず。なんとなく。
「……とりあえず、なんとなくだから、前の会社クビになったときも何も言い返せなかったのかも。恥ずかしいですね、私」
「そんなことないわよ。誰だってそんなはっきり真っ直ぐ生きているわけじゃないんだから」
苦笑いをする私を、未来さんが励ましてくれる。
「じゃあ琴乃ちゃんは、今までに『どうしてもこれがしたい』って言うのはなかったんだ?」
未来さんの言葉に軽くうなずくと、「そっかあ」と独り言のように未来さんはつぶやいた。
「俺は、さ。就活、失敗してんだよね」
すると、さっきまで黙っていた宗介さんが口を開いた。