イジワル副社長に拾われました。
そして翌日。

白井さんからアーティスト部には事故の件は話が入って、私は大事を取って仕事を休むことになった。

軽く朝食を摂り、病院へ行く準備をしていると、来客を告げるインターホンの音が鳴る。

「おはよ、琴乃ちゃん」

「どうしたんですか? 宗介さん」

意外な人の来訪に、目を丸くする私を見て、宗介さんはニカッと白い歯を見せた。

「琴乃ちゃん、病院行かなきゃいけないんだろ?」

「あ、はい」

「シロに頼まれたんだよ、琴乃ちゃんを病院に連れてってくれって」

「白井さんに?」

「ああ。本当は自分で連れて行きたかったみたいだけど、仕事が抜けられないんだと」

白井さんの気持ちがうれしくて、顔が熱くなる。

でも、昨日見た風景が脳裏に浮かんで、熱くなった気持ちは一瞬でしぼんでしまった。

「宗介さん」

「ん?」

「今日、時間ありますか?」

「今日の俺の予定は、琴乃ちゃんを病院に送っていくだけだよ。あー、それと、未来の夕飯作ること、だけど」

自分でもわかる。きっと私は思いつめた表情をしているはず。

そんな私を気遣って、お茶目な口調で話してくれる宗介さんに、私は笑顔を見せた。

「病院終わったら、相談に乗ってもらえませんか?」

「了解。お兄さんに任せなさい」

そう言って、宗介さんはウインクをした。






診察を終え、私と宗介さんは、近くにあった洋食屋さんへと入った。

私はオムライスを、宗介さんは日替わりランチを注文し、一息つくと、宗介さんが口を開いた。

「そろそろ、シロに自分の気持ち、伝える気になった?」

いきなり核心をつかれ、言葉に詰まる。

「あ、図星だ」

「もー、宗介さん、いきなり言わないでくださいよ」

ニヤニヤとする宗介さんを軽くにらみ、私は水を一口飲んだ。

「昨日、事故に遭う前に、白井さんが女の人と一緒にいるところを見かけたんです」

「え? それ、何かの見間違いじゃない?」

目を丸くする宗介さん。私は首を横に振る。

「見間違いじゃありません。キレイな女の人と一緒でした」

「そっか……」

「その人が誰なのか、白井さんにとって特別な人なのか。とても気になるんです。だから、私、怖いけど、聞いてみようと思うんです。彼女のこと」

宗介さんは黙って私の話を聞いてくれる。

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