イジワル副社長に拾われました。
私の言葉に、白井さんが目を丸くする。

「あのなあ、俺、彼女いないって言ったよな」

「確かに、以前は言ってましたけど……」

「今もいねぇんだけど」

不機嫌そうに、テーブルの上をコツコツと白井さんの指が舞う。

その指をジッと見つめていると、指の動きが止まった。

「で?」

「はい?」

「お前の話って、何?」

急に核心を突かれ、思わず動きが止まる。

「電話でクロは『話がある』って言ってたんだけど。流れからいくと、話があるのはお前なんだよな?」

「は、はい。そうです」

私が首を縦に振ると、白井さんはジッと私の目を見つめた。

白井さんの視線が真っ直ぐ過ぎて、私は思わず固まってしまう。

見つめられて、緊張で心臓の鼓動が速くなってくるのがわかる。

でも、私は決めたんだ。もう逃げないって。

白井さんのことを、あきらめないって。

だから、勇気を出してちゃんと伝えよう。

私を見つめる白井さんと、しっかりと目を合わす。

「し、白井さんっ!」

「ん?」

「白井さん、前に私に『なんでお前はすぐにあきらめる?』って聞きましたよね」

「……ああ。聞いたことあったな」

「それから考えてみたんです。なんで今まで私、いつもすぐにあきらめることができていたのか」

私の話を、白井さんは黙って聞いてくれる。

私は、白井さんの目をちゃんと見つめて、丁寧に言葉を紡いでいく。

「もちろん、前の彼のことは好きだったし、仕事も楽しかったです。そのふたつが一気に消えちゃったときには、すごくショックでした。でも、どうしてもあきらめきれない。かっこ悪くてもいい、もがいてやろう。そういう気には起こらなかったんです。でも、ようやく私にもあきらめられないものが見つかりました。白井さんです」

私の言葉に驚いたのか、白井さんの目が少しだけ丸くなる。

「最初、未来さんが彼女かと思ってあきらめようとしました。昨日も、綺麗な人と一緒だったから、やっぱり私とは釣り合わないって、そう思いました。だけど、そばにいたいって思うんです。白井さんのこと、もっと知りたいって思うんです。わ、私っ、白井さんのことが好きなんです……」

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