イジワル副社長に拾われました。
「航兄ちゃん、このお姉ちゃんはだあれ?」

「初めまして、桐原琴乃って言います」

柊くんの高さまでしゃがんでペコリ、と頭を下げる。

「琴乃ちゃんは、航兄ちゃんの彼女?」

「え、えっと、あの……」

こんな小さい子にどう答えていいのか迷っていると、奥からよく知っている声が聞こえてきた。

「そうだよー、柊」

そう言って笑いながら、柊くんの頭をなでるその人は。

「こ、康太郎さん!?」

な、なんで航さんの実家に康太郎さんが?

今の自分の状況が呑み込めなくてあたふたしていると、横から航さんが声を掛けてくれた。

「康太郎さんは、俺の義理の兄。んで、柊と蓮は康太郎さんの息子だよ」

「え? 義理の、お兄さん……?」

「そ。だから、この状況を作ったのも康太郎さん。でしょ?」

航さんの言葉に、康太郎さんはニヤリと口角を上げた。

「だって、さゆりが桐原さんに会いたいって言ってるのに、航は無視するからさー。夫としては、妻のお願いを聞いてあげるしかないじゃない」

悪びれた様子のない康太郎さんの言葉に、航さんは大きくため息をついた。

そこで、今日の未来さんの思わせぶりな態度を思い出す。

きっと未来さんは、康太郎さんから今日、私が航さんの実家を訪れるようになることを聞いていたんだ。

だけど、それを私には話せなくて、思わず口をつぐんでしまったんだな。

「大丈夫か? 琴乃」

「はい、なんとか……」

まだ状況についていけなくて目がテンになっている私に、航さんは苦笑いを向ける。

「悪いな。康太郎さん、姉さんのこと溺愛してるから」

「まあ、デスクに写真飾ってあるし、いつも自慢してますもんね」

「その割には気づかないもんなんだな」

「え?」

なんのことだかわからず、小首を傾げる。

「お前、この間誤解してたじゃねぇかよ」

「……あ!」

ジュエリーショップの前で、航さんとお姉さんが並んでたのを見たときのことだと気づく。

「確かに写真は見せてもらったことありますけど、でもそんなはっきりと覚えてなくて」

「それもそうだな」

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