イジワル副社長に拾われました。
「『おばあちゃんって呼ばれるのはちょっと嫌なの』って言って、名前で呼ばせているんだよ、僕の妻がね」

航さんのお父さんが、ニコニコ笑う。

妻、ということは、航さんのお母さんということで。今は私の……

「しゃ、社長……」

「あら、イヤだわ。家で社長とか呼ばないで。せっかくだからお母さんって呼んでもらおうかしら」

キリリとしたさわやかな目元が少し航さんに似ている社長が、赤い艶めいた唇を尖らせる。

「それはまだ早くないかい、百合子さん。康太郎くん、航くんは琴乃ちゃんにプロポーズはしているのかい?」

「いやあ、まだじゃないですかね。付き合い始めてまもないですし」

「お母さんがそう呼んでもらうなら、私もお姉さんって呼ばれたい~っ! 可愛い妹、欲しかったんだもん!」

「……いい加減にしろ。琴乃が固まってんじゃねぇかよ」

トイレから戻って来た航さんのツッコミで、私は固まりかけた意識を取り戻したのだった。


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