イジワル副社長に拾われました。
どんなときでも
「悪かったな、付き合わせて」
「いいえ、楽しかったです」
白井家でのクリスマスパーティーを終えて、帰宅途中の車内で、運転席の航さんが、苦笑いを浮かべた。
航さんのお母さんが帰宅し、全員揃ったところで始められたクリスマスパーティー。
お料理教室を経営しているさゆりさんの料理はどれも見事で、いつも以上にたくさんパクパクと食してしまった。
柊くんと蓮くんも私になついてくれて、今度は航さんと四人で動物園に行く約束もしたくらい。
それにしても、驚いたのは航さんの家族の元気のよさ。
ふんわりと穏やかな表情を浮かべながらも、ニコニコと私と航さんのことを目を輝かせてお父さんが聞いてきたと思ったら、お母さんもそれに乗っかってグイグイ聞いてくるし。
私が答えに詰まったり、航さんが話を遮ろうとすると、康太郎さんがなだめながら私たちの情報を提供しちゃって、航さんに怒られたり。
さゆりさんとは番号交換までして、今度料理教室にお邪魔することにもなった。
「うちの家族、俺以外はみんな暴走するんだよ。康太郎さんは面白がって暴走してるけど、他は天然。考えずに暴走するから止めるの大変でさ」
「残念でしたね、康太郎さんが味方についてくれなくて」
「そうなんだよ……。姉さんが結婚したときに楽になるかな、って思ったけど、逆。今まで以上に疲れんだよ」
はあ、と航さんはため息をつくけど、目は笑ってる。
なんだかんだ言って、家族のことが大切なんだな、大好きなんだなっていうのが伝わってきて、私も小さく微笑んだ。
「何笑ってんだよ」
「いえ。航さん、みんなのこと大好きなんだなって思って」
「……」
赤信号でタイミングよく止まった車の中で、航さんが天井を見上げた。
「はあっ。お前も俺の味方してくれないのかよ」
「そんなことないですよ。さっきも私たちのなれそめとか、なるべく話さないように頑張ってたじゃないですか。航さん、私の頑張り見てなかったんですか?」
「俺がいたからあの程度ですんだけど。琴乃、お前ひとりじゃ絶対負けるぞ」
「そんなこと……」
ない、と言いかけて口を閉じる。
確かに私ひとりじゃ、あの白井ファミリーの追及を逃れられる自信がない。