イジワル副社長に拾われました。
今は人生のどん底だったら、あとは上昇するだけだもん。

新しい仕事を見つけて、素敵な恋人を作ろう。

そうして、勤と希美ちゃんより幸せになってやる!

「……すみません……」

心の中でガッツポーズをしたつもりが、どうやら本当に大きく腕を上げてしまっていたことに気づいたのは、助けてくれた彼が小さく笑ってからだった。

「今から、時間あるか?」

腕時計を見て時間を確認した彼が、私を見つめる。

「えぇ、まあ」

残念ながら先程職を失った私。

見事なまでに時間はくさるほどある。

「ここで会ったのも何かの縁だしな。行くぞ」

「え、え!?」

あたふたする私をよそに、伝票を持ってスタスタとレジへと歩いていく彼。

「ま、待ってください!」

私もカバンを手に取り、後をついて行く。

「い、行くってどこにですか?」

私の言葉に彼はニヤリと微笑んだ。

「仕事だよ」

「はい?」

「お前に仕事をやる。ついて来い!」




桐原琴乃、二十九歳。

本日、七年間勤めた会社をクビになりました。

そして、それから数時間後。

何やら、転職に成功しそうです……?


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