「君」がいるから【Ansyalシリーズ ファンside】 

24.失った友 受け止められない現実



告別式の夕方、24日に家を飛び出して以来、
三日ぶりに家の玄関を潜った。


玄関を開けた途端、無言で頬を打って何処かへと出掛ける父に
「何してるの。里桜奈。連絡くらい寄越しなさい」っと文句を言って私を抱きしめる母。


そんな両親に迎えられて家の中に入る。



「ほらっ、里桜奈。
 お友達が亡くなったんですって。

 紗雪ちゃんが電話かけてきてくれたわ。
 紗雪ちゃんのお家にお世話になってたたんですってね。
 熱まで出したなんて、迷惑かけたのならちゃんと里桜奈から電話が欲しかったわ。

 もう熱は下がったの?
 Ansyalだったかしら。
 里桜奈、好きなのね……。

 貴方の部屋の机でCD見つけたわ」

「うん……。Ansyalが私に友達を繋げてくれたの」

「そう」

「お友達が亡くなったのはショックかもしれないけど、
 ゆっくり元気になりなさい。

 ほらっ、晩御飯食べなさい」



想像以上に優しく迎えられた私は、
戸惑いながらその後、母と時間を過ごした。


逃げるように家を飛び出して寮生活を始めた私にとっては、
久しぶりにお母さんとゆっくりと話をした気がした。



「ほらっ、まだ無理しないのよ。
 28日から年末年始モードで慌ただしくなるわ。
 だから里桜奈にも手伝って貰うわよ。

 今日はゆっくりしなさい」

「うん……お休みなさい」


母にそう伝えて、階段を登り三日ぶりに自分の部屋へと入った。
そのままベットに倒れ込んで、電気を消すと私は携帯電話を握りしめる。





里桜奈ちゃん


家には無事に帰れた?
ご両親は大丈夫だった?

大切な存在を失った直後で、
まだまだ心が辛いと思うけど、
無理しないでゆっくり休むんだよ。


疲れた時は、休んでもいんだよ。


お休みなさい。


楓我









お休みなさい……楓我さん。

返信しようと思ったけど、もう23時をまわってしまっているのに気がついて
メール送信を思いとどまり、心の中だけで呟いた。


その日……私の夢の中に初めて祐未が姿を見せた。



真っ白な空間で、祐未が私に笑いかけながら黙って手を振り続ける。
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