「君」がいるから【Ansyalシリーズ ファンside】
「里桜奈、もうすぐ三学期でしょ。
宿題は終わったの?
悲しいことが続いた冬休みだったけど、
ゆっくりと前に進みなさいね」
そう言うと、今もAnsyal話題が続くテレビのチャンネルをお母さんは変えた。
だけどどのチャンネルも、Ansyalの話題を取り上げていてすぐにテレビを消してくれた。
「ごめんね……テレビ。
私、自分の部屋に行くからお母さんは好きなテレビ見てね」
声をかけて私は自分の部屋に戻った。
ノートパソコンを立ち上げて、『Ansyal』のキーワードでいろんな情報を検索する。
私や紗雪が、祐未の死で経験したみたいに……全国に住むAnsyalファンたちで、
私たちと同じように大切な仲間を……友達を失った子たちも存在していた。
*
Taka
Takaなんて大嫌い。
大好きだけど……大嫌い。
もう生きていたくないよ。
Takaが居ない世界。
光を失った世界なんて、
もうどうでもいいよ。
*
Takaさま
今から貴方のところに行きたいって言ったら、
貴方は私を迎えに来てくれますか?
Takaの曲を聴きながら、
Takaに包まれて眠るように貴方の傍に行けたら
どんなに嬉しいかな。
*
Taka Taka Takaっ!!
どうして居なくなったの?
二人のTakaなんて私は知らない。
隆雪と雪貴ですって?
なんでそんな、ファンを裏切るようなことするのよ。
ずっと違和感あった。
あの聖夜のLIVEから、音変ったもん。
ファンをバカにするのもいい加減してよ。
私にとってのTakaは、Takaだけ。
偽物のTakaなんていらない。
Ansyalの本当のTakaを返してよ。
*
Takaをキーワードに次から次へと引っかかる
ファンのBLOGの悲痛な叫び。
そんな日記を読んで居たら、
本当にTakaが居なくなってしまったのだと
少しずつ私の中で、Takaの死がリアルへと変わっていく。
【Ansyal Taka 死因】
恐る恐るそんなキーワードを検索画面に打ち込む。
すると飛び出してきたのは
Ansyalのメジャーデビューと同時に脳腫瘍。
聖夜のLIVEに向かう途中の交通事故で植物状態。
脳腫瘍と植物状態だったなんて言う情報が
ソースが何処かなんてわからないけど溢れかえってた。
裕先生……先生は託実さんの従兄弟だって診察の時に話してくれた。
先生に聞いたら……Takaのこと、もっとわかるのかな?
そんなことを漠然と考える。
だけどすぐに、それはイケないのだと自分に言い聞かせる。
そして次に浮かんだ思考は、二人のTaka。
お兄さんのTakaさんがAnsyalを組んで、
弟のTakaさんが、お兄さんが倒れた後、ずっと影武者として活動を続けてた。
解釈としては、あのインタビューはそんな話だったはず。
私が出逢ったのは?
私が……LIVEで応援し続けてたTakaは今、どうしてるの?
ふとそんなことが気になって、次のキーワードを検索する。