「君」がいるから【Ansyalシリーズ ファンside】 







ねぇ、Ansyalのファンって今、めちゃくちゃだよね。

あんなことやって、残されたメンバーがどれだけ重たいもの
背負わされるのか考えたことあんのかな?





だよねー。
私は……Ishimaelにそんなことさせられないよ。





そうそう、年末に死んだ井原だけどさ……
マミは海外で参列できなかったでしょ。

けど、自殺だって。

おばさんが凄かったんだから。
Ansyalが祐未ちゃんを殺したってさ。







ひそひそと、面白おかしく祐未のことを話す声に
思わず耳を閉ざしたくなる。




私は早々に教室を出て一人の時間を選ぶ。






Takaが消えて、Ansyalが聴けなくなって、
祐未が居なくなって、雪奈さんが居なくなって……楓我さんとも連絡がとれない。


紗雪は今は療養中。





何なんだろう。
ただ時間が流れる中に、昔みたいに、宙に浮いたように私の時間が存在してる気がする。





離人感に強い感覚が私を縛り付ける。

なんだか強い不安感だけが前面に出てしまって、
救いを求めるように鞄をギュっと握りしめて裕先生の待つ病院へと急がせた。







病院の受付に行って、予約はしていないけど診察を受けたい旨を伝える。



だけど……その日、裕先生の外来はなくて……
だけど裕先生以外の先生の診察はうける気にならなくて、
私はトボトボと病院を後にした。




予約をしてなかった日なんだから、
当然と言えば当然のはずなのに……裕先生にも拒絶されてしまったような錯覚が、
私を孤独にさせていく。





そんな風に思ってはいけないはずなのに、
私の想いとは裏腹に、心が凍り付き始める感覚。




少しずつ息苦しくなって、立っていられなくなってきた私は
そのまま病院のロビーの隅に座り込んでしまった。




呼吸さえ落ち着いたら大丈夫。
怖くないから、パニックなんて起こさなくていい。




『大丈夫だよ』




何度も何度も、自分に言い聞かせるように心の中で言葉を繰り返す。





< 118 / 125 >

この作品をシェア

pagetop