「君」がいるから【Ansyalシリーズ ファンside】
「里桜奈ちゃん?」
そんな私に話かけてきたのは、ずっと連絡が取れなかった楓我さん。
「……楓我……さん……」
「落ち着いて……。
ほらっ、ゆっくりと呼吸して。
薬は?
裕先生は?」
「裕……先生、居ないの」
ようやく絞り出した言葉に楓我さんは、
私を支えながらゆっくりと立ち上がる。
「あれっ、里桜奈じゃない?
どうしたんだよ。
こんなところで」
楓我さんに支えられる私に声をかけてきたのは朝日奈くんだった。
「朝日奈……くん」
「何、紗雪だけじゃなくて里桜奈も体調悪い?
紗雪、今日学校休んだってメール来てたからさ」
「里桜奈ちゃん……?」
「あっ、楓我さん……えっと、Ansyalのチームで一緒で
紗雪の友達の朝日奈さん」
何とか落ち着いたところで、ぎこちなく朝日奈さんを説明するものの
当の本人は、何故か不機嫌そうだった。
「朝日奈空音」
そう言って、ただ名前を名乗った朝日奈さん。
楓我さんはそんな朝日奈さんに、ゆっくりと手を差し出す。
「じゃ、里桜奈。
またスタジオで。落ち着いたら、また紗雪と来いよ。
待ってるから」
そう言って正面玄関から出て行った。
「里桜奈ちゃん、少し休んでいったらどう?
発作起こした後だし、裕先生捕まらないなら、直弥捕まえればいいだろ」
そう言って、楓我さんは私の手を引きながら一番奥のエレベータへと乗り込む。
このエレベーターって、確か……病棟に続くはず。
えっ?
楓我さん……もしかしなくても、今も入院してるの?
この間、退院した気がするのに……。