「君」がいるから【Ansyalシリーズ ファンside】
そう……だからAnsyalの曲も聴けなくなった。
届かなくなった。
そんな風に感じて、そんな風にしか感じられない自分自身が許せなくなった。
「里桜奈ちゃん……里桜奈ちゃんにとって、TakaはTakaじゃないの?
世間で言われてる、兄のTakaか弟のTakaどちらかに拘らないといけない問題なのかな?
兄の時代からのファンが偉いわけでもなければ、弟が演奏するようになってからファンなったからって
劣ってるわけじゃないよね。
そんなの心無い人たちが、好きに評価しているだけだよね。
一番大切なのは……里桜奈ちゃんがAnsyalに出逢って、Takaに出逢って、
何を貰って何を感じてきたかじゃないかな。
今は現実が辛すぎるかもしれない。
だけど、生きていればゆっくりとその傷は必ず癒せる日が来るから。
だから今はゆっくりと、心を休める必要があるのかも知れないね」
「……ねぇ、先生、楓我さんもう少しだけ聞いてくれる?」
私がゆっくりと言葉を紡ぎだすと二人は真っ直ぐに私に向き直って、
この年末年始に体験したこと、経験したこと感じたことを自分の言葉で吐き出した。
「大変だったね……」
「よく頑張ったね」
全てを聞き終えた後、楓我さんと裕先生は労うように思いをくれた。
あの日から……私の暗闇は再び始まった。
今は私が私をわからない。
そんな時間だけど……それでも、生きている限り時間は流れ続ける。
そして昨日とは違う明日が、必ず訪れる。
あの日の暗闇と似て異なる暗闇は、
暗闇の中に僅かな光を灯し続けてくれる。
ねぇ……Taka。
今の私には、何がどう正しいのか、間違ってるのかなんてわからない。
わからない時点で、AnsyalのTakaファンだって胸を張って宣言することなんて許されないのかもしれない。
だけど……Takaを悲しませたくないって、
その思いだけは嘘偽りはないから……。