「君」がいるから【Ansyalシリーズ ファンside】
二人だけに戻った病室。
またカーテンを開けて私のベッドサイドに腰掛ける楓我さん。
「怒られちゃった」
悪戯っ子のように呟いて。
「怒られてましたね」
私も切り返す。
「今度は、こっちで楽しむか」
そうやって取り出したのはイヤホン。
右と左のイヤホンをそれぞれ、一人ずつの片耳に突っ込んで寄せ合う体。
少しずつ縮まって行く二人の距離。
体を動かすたびに触れ合う体。
そんな時間が温かくて。
少しずつ警戒心がほどけていく。
この時間があまりにも優しすぎるから。
耳から流れるメロディーは(生きてて良かった)っと思えた、
私の背中をゆっくりと押してくれるみたいに、
何処までも温かくて優しかった。