「君」がいるから【Ansyalシリーズ ファンside】 



「楽しそうだね」



あんなにも怖かった外の世界が今は何故か怖さなんて感じられなくて。

気持ち一つで変わり行く自分を取り巻く世界に翻弄されながら、
その場所に向かって歩き続ける。



「ここだよ」




そう言って立ち止まる楓我さん。
自然と足を止める裕先生。



「入る?」


ここ、CD屋さんなの?


ちょっぴり、そう思わずに居られない雰囲気が漂う薄暗いビル。


小さく頷くと二人は私の手をとって、ゆっくりと歩いていく。


薄暗いビルをずずーっと入っていくと、
目の前に姿を見せたエレベーター。


エレベーターに乗り込んでさらに地下へ。
B2Fのランプがついて、エレベーターのドアが開く。


ドアが開いた途端にデッカイポスターがお出迎え。


何?

恐る恐る一歩ずつ踏み出してエレベーターを降りる。




「いらっしゃいませ」

「里桜奈ちゃん、ほらっ、こっち」


楓我さんが私の手を引いてフロアの方へ連れて行く。
天使の羽みたいなのを背負った人たち。


紫や茶色や赤。

様々な髪の色をした人たちのポスタ-の前に連れて行く。




……Ansyal……。



ポスタ-に描かれた筆記体は何を書いてるかわからないサイン、
だけどその隣側には、はっきり読めるバンド名。



「Ansyal?」

「そう。Ansyalのメンバーサイン入りポスターだよ。
 
 こっちがドラムの憲。
 この二人が ギターのTakaと祈。

 それで、こっちがベースの託実で最後、ボーカルの十夜」


優しくメンバーを紹介してくれる楓我さん。



楓我さんが教えてくれた名前を小さく何度も反復する。


反復している最中、
お店の中で静かに流れ始めるAnsyalの声。


暫くポスターの前から動けなかった。



私の知らない世界を一つずつ知っていくのは、やっぱり嬉しくて。


メンバーの名前を紡ぐだけでちょっと心の中が暖かくなって、
胸が高鳴っていく。


ポスターを見つめて立ち尽くす私を二人はそっと見守ってくれてた。


「Ansyalお好きなんですか?
 今でしたら、こちらと同じポスタープレゼント出来ますよ。

 サインはついてないですけど、AnsyalのCDアルバム一枚お買い上げいただければお渡しできます」



立ち尽くす私に営業トークをさり気なくいれてくるスタッフのお姉さん。


いつもは届かない言葉も今日は、(ポスタープレゼント)の重要な部分は確実に聴こえて、
Ansyalの現在出てるシングル二枚と、アルバム一枚を手にしてレジへと向かう。



「有難うございます。
 アルバム一枚とシングル二枚でお会計8400円になります」

「一万円でお願いします」


お財布から、また諭吉さんを羽ばたかせる。


「それでは、こちらがお返しとAnsyalのポスターとおまけについてるアー写になります。
 後は、こちらが当店のオリジナル特典のコメントDVDです」


お姉さんが袋につめて、にこにこしながら手渡してくれる。
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