「君」がいるから【Ansyalシリーズ ファンside】 

8.友達


友達って何?


紗雪と出会った直後、
初めて出来た友達に凄く心が躍った。


楽しかった。


朝の待ち合わせ。

一緒に寮を出て大好きなAnsyalの話をしながら、
電車の中で二人で一つのプレーヤーに挿したイヤホンを、
右と左に半分子して音楽を聴いて通学。

学校の最寄り駅、駅前のコンビニに寄って買い物して学校へ。

学校でも休み時間の度に集まって過ごして、
お昼ご飯も一緒にテラスで食べる。


今、あたり前になった日常。
凄く楽しい。




嬉しいはずなのに、なんか今一つ馴染みきれない生活。



楽しい時間を歩いてるはずなのに、
Ansyalに出逢って生まれ変われたはずなのに、
目を閉じると今も思い出すんだ。


幼稚園・小学校・中学校とずっと孤独【ひとり】で誰にも見えなかった時間。
あの時間に戻るのが怖くて今の時間に必死にすがろうとしてる。


今も……紗雪の顔色見て、クラスメイトの顔色見て、先生の顔色見て。
出会う人、交流を持つ人、全ての顔色を見てずっとビクビクしてる。


この時間を終らせたくない。
もう独りに戻るのは嫌だよ。



誰からも、見えなくなるのは嫌。


それが根っこに今も根付いてる。
生まれ変わったと思ってたのに……。




「里桜奈、何ボーっとしてるのよ」

「あっ、ごめんなさい」



紗雪の言葉に反射的に謝ってしまう私自身。




しかも意識して伝えてるんじゃない。
習慣化してしまってる何気ない言葉。


「えっ、ごめんなさいって何が?」


真っ直ぐに目を見つめて切り込んでくる紗雪。
そんな紗雪の目が怖くなって思わず目を逸らす。



「ボーっとしてしまってごめんなさい。
 紗雪を不愉快にして……ごめんなさい……」



だんだん、小さくなっていく言葉。



「もう、里桜奈ったら何言ってんのよ。
 それくらいのことで謝んないでよ。

 私たち友達でしょ」



紗雪は逸らした私の視線を追いかけるように、
もう一度捕らえるとにっこり笑って伝えた。


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