「君」がいるから【Ansyalシリーズ ファンside】
「いんじゃん?
チームの総長かぁ。
貴姫さんって言えば、ファンの中でも有名だよな。」
「俺も良かったら逢いたいっていっといてよ。
その紗雪ちゃんにさ。
そしたら……里桜奈ちゃんは俺とLIVEも行けるし、
紗雪ちゃんとの約束も果たせるだろ。
なんか……デートみたいで楽しそうじゃん」
楓我さんが紡いだ『デートみたいで』って言う言葉にドキンとしてしまう。
やっぱり……ほっとしてる。
楓我さんが隣に居てくれるのが、
何時から……心地よくなったんだろう。
彼の隣にいる私が一番自然体でいられてる気がするよ。
その後、楓我さんの病室でもう暫く時間を潰していつものように、
裕先生とのセッションを終らせてゆっくりと家路に着いた。
電車の中、紗雪に一通のメール。
☆
お疲れ。
部活、今日も大変だった?
あのね、5.5のチケット取れたよ。
ただ、チームと総長さんに会うのにもう一人一緒でもいいかな?
私にAnsyalを教えてくれた楓我さんと一緒に行く約束してるから。
里桜奈
☆
軽蔑されないかなーってドキドキしながら送信するメール。
暫くしてAnsyalの着うたが静かに響く。
☆
ばんわー。
いいよ。
楓我さんって里桜奈の彼氏?
チームの皆と総長さん、支部長さんには伝えとくよ。
あっ、Liveの日、出来るだけか黒か白のドレスコードで宜しく?
紗雪
☆
えっ?
黒か、白?
ドレスコード?
AnsyalのLIVEってドレスコードまで存在するの?
紗雪の思わぬ言葉にキョトンと携帯を握り締めてフリーズ状態。
なんとか落ち着かせて見えてきた自宅に溜息を一つ。
GWって言うのもあって寮が一時的に閉鎖されてしまうから帰宅した我が家。
片道2時間の道程。
でも……この場所は今も馴染めない。
自宅に着いて玄関のドアノブに手をかけたまま深呼吸。
覚悟を決めてドアを引くものの開かない。
えっ?
鞄の中から鍵を取り出して自分でロックを解除する。
その音に反応して姿を見せる母。
玄関に灯される電気。