「君」がいるから【Ansyalシリーズ ファンside】
14.大きな勇気 小さな一歩
紙一重の強さってなんだろう。
あの日から……裕先生に問われた質問ばかり考えてる。
あの夜、紗雪はとっても優しかった。
こんなにも優しくしてくれる紗雪が好き好んで、
仲間外れになんてするはずない……。
紗雪は……あの時何て言ってた?
確か……
☆
自分で心を開こうとしない人に、
こっちから近づいても疲れるだけだから。
だったら、それは友達じゃないよね。
一方通行なんだからさ。
一方通行なんて保護者だけで十分じゃない?
☆
友達じゃない。
その言葉にだけ、私……過剰反応してた。
受け入れられない見てくれない寂しさを、
相手ばかりに押し付けて心を閉ざして守ってばかりになってた。
話す努力をしなかった。
交わる努力を忘れて助けてくれる、
おんぶしてくれる人だけを当たり前のように待ってた。
弱さに甘えて我慢することだけが、
心を閉ざすことだけが強さだと言い聞かせてた。
だから……大嫌いだった。
私を苛める人も、私自身も、家族も……学校も先生も。
教室の自分の机、席について井村さんの席だけを見つめる。
今日も誰かと言葉を交わすわけでもなくて、
ひっそりと読書に読みふける。
井村さん自身から世界を遮断している自己防衛のフィールドのように私には映って。
彼女の背中を見つめながら心の中がざわつく。
寂しいんだよね……寂しくないわけないよね。
私が……あの時、寂しかった。
寂しくて誰かと交わっていたかったのに、
交わっていたいと望む分だけ、どう思われてるのかが怖かった。
誰かの視線が怖くて怖くて……殻の中に閉じ込めた。
殻の中は優しいから。
殻の中は……優しくて寂しい場所。
その寂しさを私は……知ってる。
あの頃、二人だけの時間を大切にして、
僅かでも私を友達として受け止めてくれた奈知。
あの頃の私は……奈知の心すら読み取ることが出来なかった。
偽りの友達だと罵って……気に入らない現実の責任を奈知に押し付けた。
でも……今なら……。
「里桜奈、何難しい考え事してるの?」
額にコツンとデコピンして私の正面で微笑む紗雪。