「君」がいるから【Ansyalシリーズ ファンside】
いやっ。
「えっ……えっと、ごめんなさい。
謝らないでください。
私が悪いんですから……。
凄く嬉しかったです。
嬉しすぎて緊張しすぎて……」
一気にまくしたてる私に「写真撮ろうか」っとTakaの一言。
有難うも何も伝えられないまま並んだ二人の2ショット。
憧れの時間はこうして一瞬のうちに、
私の大失態で過ぎて行った。
帰ったら、ファンメで謝らないと。
ショボーンとしたまま憲さんの元へ。
「何?Takaにしたこと後悔してるの?」
隣に居た憲さんには私がTakaにしたことは筒抜けで問われるままに頷く。
「気にしなくていいよ。
アイツ、そんなことで機嫌損ねたり害したりしないからさ。
君がTakaを思う気持ちは伝わってんじゃない?」
慰めるように言葉をかけられて、
そのまま並んで、肩に手を添えられてパシャリ。
ラスト。
もう、放心状態のまま向かった最後の砦。
十夜さん。
ふいに頬に触れる、温かい温もり。
えっ?
えぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!
その温もりが十夜さんの唇が触れた感触だと気付いたころには、
もう……手遅れで。
きゃあぁぁぁっと、ざわめく会場ない。
十夜さんと言えば、罪悪感も何もない様子で舌先で自分の唇をペロリと辿る。
「Takaとあまりにも楽しそうなことしてたから」
悪戯っ子のような目を向けて笑いかける。
「今日は有難う、俺の子猫ちゃん。
ご褒美のお姫様抱っこで記念写真なんてどう?」
「ご辞退申し上げます」
何とか最後の写真撮影を平凡に終えてステージを降りた頃には、
へなへなと腰がぬけて……慌てて紗雪が体を支えてくれて裕未さんが、
先ほどの写真をスタッフさんから貰ってくれる。
抱えられるように会場を後にして、
玄関前に腰を落ち着かせる。
嬉しいけど刺激的すぎる撮影会。
「ねっ、なかなか十夜って刺激的でいいでしょ。
これだから十夜との時間は堪らないのよ。
あぁ、次も撮影会当選しないかな?」
紗雪がうっとりしながら私に問いかける。
手渡された、貴重な5枚の写真をじっくりと見つめながらため息しか出てこない。
もっとうまくコミュニケーション出来たらなー。
浮かび上がるのは、反省点ばかり。
「ねぇ、今日のAnsyalのLIVE見て決めた。
私、楽器始めるよ」
紗雪の爆弾宣言に裕未さんも「私も」っと参戦の声。