「君」がいるから【Ansyalシリーズ ファンside】
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夏休み最後の夜。
練習の後、寮に戻ってシャワールームで汗を流して浴室から出てきた時、
ふいにインターホンの音が編の中に響く。
「はーい」
受話器をとって返事すると、紗雪の声が聞こえる。
「里桜奈、ご飯行こうか。
そろそろシャワー終わるかなーって顔出してみたんだ」
「あっ、鍵開けるから入って。
今から髪の毛だけ乾かしたい」
そう言いながら受話器を置いて、
タオルドライしながらドアのロックをはずす。
「あぁ、髪の毛乾かしてあげるよ。
後、今Ansyal仲間の友達から、この夏のツアーのレポート来たんだ。
私たちが参加出来なかった会場のLIVEとセットリスト。
後はファンクラブ旅行の写真。
携帯で撮影したLIVEハウス会場の雰囲気。
メンバーの入りと出の瞬間とかも入ってるよ」
そう言いながら紗雪はCDを私に手渡した。
手渡されたCDをPCのドライブにセットして起動させると、
沢山の写真と動画が幾つも入ってた。
メンバーの入り会場風景、お客さん達がチケットを手に並んでる整列風景、
会場に集まったファンがメンバーに送る寄せ書きが完成するまでの動画、
LIVEが始まる前の会場内の風景、メンバーの出。
こんな順番で、各会場内の雰囲気がわかりやすいのようまとめられていたツアー写真。
そしてファン旅行の映像はバスの中の写真、観光にまわったお寺やディズニーランドでの写真などが沢山詰まってた。
そんな会場の映像を見ながら「また行きたいねー」って紗雪と話してた。
流石に学生の身では全てのツアーに参加できる交通費とチケット代は持ち合わせてないわけで、
楽器を買うのに必死な私は夏のツアーは泣く泣く諦めた。
ドライヤーを使って紗雪が髪の毛のスタイリングを全て終えると、
私たちは食堂へと晩御飯を食べに降りる。
唐揚げエビフライ定食と書かれた、今日の夜メニューにはご飯・お味噌汁・ミニオムレツまでついてた。
そしてデザートには濃厚なアイスクリーム。
そんな晩御飯を食べると今度はギターを持って紗雪の部屋へ。
そこで紗雪にも教えて貰いながらAnsyalの昔のDVDを見せて貰った夏休み最後の夜。
翌日から二学期が始まった。
二学期になって私の活動は少しずつ激しくなった。
今までは学校と寮、時折、裕先生と楓我さんのいる病院。
そんなスタイルだった私。
だけど……学校と寮。
そして病院は変わらないけれど、夏休みになってから増えた楽器の練習時間とバイト時間がそこに組み込まれた。
それでも九月も私にとっては輝いた時間。
私の知らないAnsyalを沢山知って、
裕先生からも『明るく笑えるようになってきたね』って褒めて貰えた。
最初は全く自分を褒めることなんて思いつかなかったけど、
今はほんの少しずつだけど、自分を認めること褒めることが出来るようになってきた。