「君」がいるから【Ansyalシリーズ ファンside】
練習場所:第二音楽室。
バイトも塾もないのをいいことに教室を出て三人で第二音楽室に向かうとそこには、
Pearlの真っ白なドラムセットが設置されていた。
「えっ?
嘘、ドラムセットまである」
扉を開けた途端に、祐未が声をあげる。
すると奥の準備室側の扉から、
軽音同好会の顧問を受け持ってくれたシスターが姿を見せた。
「ごきげんよう。シスター瀬川【せがわ】」
三人同時に挨拶をするとシスターはゆっくりと視線を合わせる。
「ごきげんよう。
今日から軽音同好会発足ですね。
準備室に先ほど、ドラムセットを片づけられるように棚を用意しました。
こちらのドラムは理事長先生がご自宅の倉庫に眠っていたものを提供してくださいました。
勉学と両立して、素晴らしい演奏をお披露目してくださる日を楽しみにしています」
そう言うとシスターは、ゆっくりと鍵を手渡して退室していく。
「準備室も見てみようよー」
紗雪の言葉に私と祐未もドキドキしながら奥の扉を開く。
すると設置されたらしい棚にはそんなに大きくはないけど、
Marshallのアンプが設置されてる。
「あっ、アンプまで用意してくれてる。
ギター、持ってくれば良かった。
スタジオ練習の前に寮に戻ると思ったから持ってこなかったんだ」
私が呟くと祐未と紗雪は一階の管理室の手荷物預かり所には相棒居るよーって、
二人して取りに音楽室を飛び出していく。
そんな二人を見送って一人だけになった私は、
ドラムセットの椅子にチョコンと腰掛けて足のペダルを恐る恐る踏んでみる。
ドン。
少し重たい音が聞こえた後、カシャっとシンバルが重なる音が聞こえた。
思った以上に響いてしまったシンバルの音に心臓がバクバクしてる。
心臓が暴れているのを感じながら私はいそいそとドラムの椅子を後にした。
音楽室のピアノの椅子に腰掛けたまま二人の帰りを持っていたら、
祐未と紗雪は知らない誰かを連れて戻ってきた。
手にはギターとベースの入ったケースを持ちながら。
「紗雪、お待たせ。
いっつも行ってるスタジオの教室でドラム習ってるの見かけたから声かけたんだ。
ほら、いつも演奏してくれる奈智はうちの生徒じゃないから学校では無理でしょ。
伊澄【いずみ】って言うの。
祐未は知ってるよね」
「えぇ。知ってるわ。
ごきげんよう、伊澄さん」
祐未は顔馴染なのか、普通に挨拶をする。
「伊澄、こっちが里桜奈。
高校からうちに入ってきた外部生で私のクラスメイト。
もう一つ加えると寮も隣同士。私と同じAnsyal好き」
そう言って紗雪は紹介する。
「ごきげんよう。
日生伊澄【ひなせ いずみ】。
私はAnsyal派じゃなくてIshimael派なんだけどね。
宜しく」
差し出される手。
「えっと……あっ、ごきげんよう。
吉崎里桜奈です。宜しくお願いします」
っとペコリとお辞儀をしてしまう。