イジワル先輩さま、ご注文は甘い恋で
落ち着かない俺をよそに、足立さんたちはちゃくちゃくと機材を整えて準備を進めていく。
「じゃあーさっそく始めようか。」
※
こうして始まった収録だけれど…。
やっぱり予想していたことが起きた。
「はいカット!」
足立さんが疲れたように肩をすくめて言った。
場に流れる気まずい雰囲気。
これでカットされるのは4回目だ。
「すみません…!ごめんなさい…っ!」
日菜は胸元の大きなリボンに顔が隠れるくらいにうなだれて申し訳なさそうに縮こまった。
覚えたセリフをリポーターと交わしていけばいいだけのやり取りなのに、そのセリフをうまく言えずにミスを連発していた。
「だいじょうぶ、だいじょうぶ。緊張してるんだね、平気だよ!」
と励ます足立さんはにこやかだが、場の雰囲気はすこし暗くなっている。
やっぱあいつじゃだめか。
解かってた結果に、俺は心の中でにっと笑顔をつくった。無理矢理に。