イジワル先輩さま、ご注文は甘い恋で
「もっとリラックスしてね。
いつも通りにしてくれれば大丈夫だから」
足立さんにフォローされている日菜だけど、その顔は困り切って強張って、またあの泣きそうな顔だ。
もう、見てらんねぇな…。
はぁ、と胸につかえる苦しさを吐き出すようにため息をついて、俺は新しいケーキを取りにキッチンに逃げた。
「はーるともくんっ」
「っ痛!」
蹴りを食らって振り返ると、暁兄が気持ち悪い笑顔を浮かべていた。
「日菜ちゃん、助けてやんなくていいのかー?」
「…はぁ?」
暁兄はニヤニヤ笑っているが…目が笑っていない。
うっすらと背筋に寒気を覚えながらも、
「なんで?あのくらいやってもらわないと困るんだけど」
「とか言っといて、日菜ちゃんには至難の業っての解かってたくせに」
「……」
「あんましイヂワルすると、そのうち本当に嫌われちゃうよん?」
「はぁ?べ、べつに嫌われたって」
「あれ見てみなよ」
と、暁兄が顎で促したのは、さっきの若いスタッフだ。