イジワル先輩さま、ご注文は甘い恋で


「…なにやってんの、おまえ」


「……」


「まだOKでないのかよ、グズ」


「ごめんなさい…暁さんと一生懸命練習したんだけど、でもやっぱり本番になると緊張しちゃって…」




ごめんなさい、と繰り返す日菜の頬に涙が一滴落ちた。



きゅっと俺の胸は切なく締めつけられる。

くそ、なんで泣くんだよ。



俺の胸でもやもやが増して、胸を内から苦しくさせる。


どうして俺は、こいつを前にするとめちゃくちゃの思いもよらない行動をとってしまうんだ…。


今だって、




「なにやってんだよ、おまえ。この店やめたいの?」




「俺が代わってやるよ」


その一言さえ言えばいいのに、口を突いて出てくるのはひどい言葉。




「やめたくねぇだろ。
だって、やめたら、俺のケーキまた金払って食べなきゃならないもんな。ケーキが大好きな卑しいおまえにはたまんなくつらいだろ?」


「……」
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