イジワル先輩さま、ご注文は甘い恋で
平日にもかかわらず、今日も客入りは多い。
俺と日菜しかいないホールは大忙しだ。
撮影の成功に自信を持ったのか、日菜は目立った失敗も少なくよく働いていた。
心なしか。
客に向ける笑顔が可愛く見えてしまうのは、そのためなんだろうか。
…それとも、日菜に対する俺の見方が変化したからだろうか…。
「日菜、5番にコーヒー出したか?」
「うん、出したよ。追加でイチゴケーキの注文入ったから、出してくるね」
と、ケーキをデザート皿に乗せると、ぽそりと日菜がつぶやいた。
「ああ、このイチゴケーキも紹介してほしかったなー」
「……あ?」
「実はわたし、これが一番好きなの。このお店に来て初めて食べたものだから」
「ふぅん…」
もちろん、俺はそんな時のことは覚えていない。
どうしてか、そのことが悔しかった。
俺は意を決して、さっきからずっと言いたくて仕方なかったことを言った。