イジワル先輩さま、ご注文は甘い恋で
コーヒーは榊くんがさっさと淹れて持って行ってくれた。
残されたわたしは、欠けたカップをそっと集める。
涙をこらえながら。
思い描いていた夢が崩れてしまって、すごくショックだけれど。
悪いのはやっぱり、わたし…なんだよね…。
入って2週間しか経っていないけれど、数えきれないくらいドジは連発したし、スイーツ作りも失敗してばっかりだし、食器も何個も割ったし…。
晴友くんにつらく当たられるのも無理ないよ…。
はぁ…。
好きな人と一緒に働きたいなんて、無謀だったのかな…。
いつか「好き」って告白できたら、と思ってお店に入ったけれど…気持ちを伝えるどころか、少しでも認められないと、って焦ってばかりの毎日。
そばにいられるんだから一生懸命やろうって自分なりにがんばっているけど…
こんなダメなところばっかりさらしちゃ、もうとっくに嫌われちゃってるかもしれない…。
でも…。
榊くんへの気持ちをあきらめるなんて、できないよ…。
だって、こうして一緒に働けるようになったことだって、やっとの思いでつかんだ奇跡なんだもの。