イジワル先輩さま、ご注文は甘い恋で


「ごめんね…。わたし、いつもドジでいつも迷惑かけて。キライだよね、こんなわたしのことなんか…」




「……」




「嫌いなんだよね…」




俺は言葉を続けられなかった。




嫌い。



そう。

嫌いにになりたいと思っていた。




でも、今、解かってしまった。




今にも泣きそうに眼に涙をためて、それでもこらえている日菜を見て。

胸が引き裂かれそうな思いになっている自分を知って。

解かってしまったんだ…。






俺、

コイツのこと、

好きでたまんねぇんだ、って。





俺は視線を合わせないまま日菜を突き離した。




「嫌いじゃねぇよ、バーカ」


「え…」




嫌いになんて、なれるわけねぇよ…。




くそ…もう、おかしくなりそうだ…。

今さら…今さら気づくなんて。




「くそ…早くホール戻れよ」


「う…は、はい…」


「あと、これだしたらおまえ、もう今日帰っていいから」


「え、でもまだお客さん…」


「いいからとっと帰れよ!
…姉貴ももうそろそろ帰ってくるし」


「……はい」




ゆっくりと休憩室から出て行く日菜の背中を、見つめることができなかった。


あの華奢な背中を見たら、おかしくなりそうだから…。



強く抱き締めて、

『俺だけのものになれ』

って命じたくなるから…。




くそ…。




こんなにイジワルした挙句、今さら『好き』だなんて気づくなんて…。


俺は最強の大バカだ。











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