イジワル先輩さま、ご注文は甘い恋で
「…晴友くん、相変わらず女のお客さまにモテモテだね」
思わずつぶやくと、拓弥くんは「俺もモテるよ…」と付け足しつつ、
「そうだなぁ、あの営業テクは俺も教えてほしいよ。普段のあのカワイくない態度からどうやったら、あんな愛想よく変貌できるんだか」
「あんたがこれ以上ヘラヘラしたら、むしろうさんくさがってお客さまが注文したがらないわよ」
なんて突っ込みつつ、美南ちゃんはわたしの顔をのぞきこんでにっこり笑った。
「でもね、ああ見えてあいつには好きな子がいるんだよ」
え…?
「『あの子』、いつもお店に来ていたんだけど、最近仕事を始めたから来なくなっちゃって…。
それからというもの、あいつはイライラしっぱなし。『あの子』をどうにもできないから、欲求不満がたまってるんだよねー」
美南ちゃんに拓弥くんがうんうん、と相槌を打った。
「だよなぁー。
あいつ、『あの子』のことマジで好きだったからな。
だって、いっつも新作作ったら『あの子』に真っ先に紹介してたじゃん」
「もう『あの子』には明らかに態度がちがってたよね!
それで帰っちゃったら『次はいつ会えるんだろ』って背中がさびしげでっ。くっふふふ、ほんと間違いなく」
『マジ惚れ!』
とユニゾンして、拓弥くんと美南ちゃんはケラケラ笑った。