イジワル先輩さま、ご注文は甘い恋で


「ねーね、まずはメールのやりとりからはじめよーよ!
番号教えて?ラインやってる?ツイッターでもいいんだけど…」




断らなきゃ…。

どうしよう…。

どう言おう…。




コーヒーを配膳する間に、精一杯考える。




カタカタカタ…

ソーサーを持つ手が震える…。




断りたい…。


断らなきゃ…。




「ねー日菜ちゃ」




カシャン!




ソーサーをおこうとしたところで、急に伸びてきた手にぶつかった。

カップは大きく揺れ、コーヒーが大きく波打った。




「熱っ…!」




淹れたて熱々のコーヒーが、わたしの指にかかる。

それだけでなく、伸びてきたお兄さんの袖にもかかってしまった。




「あー!」




大げさすぎるくらいの大声が、お店に響いた。

肌に直接つくことはなかったけれど、シャツの白生地が見る間に茶色に染まる。




「ちょ!まっぢかよ!このシャツ高かったのに!」


「ご、ごめんなさい!」


「あーマジありえねー!テンションだだ下がりだわ!」




それまでのニヤニヤしていた表情が一変して、険しいものになり、わたしをにらみ上げた。
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