イジワル先輩さま、ご注文は甘い恋で
どうしてなの...?
「ごめんなさい、晴友くん…」
カウンターに戻った早々、わたしは晴友くんに頭を下げた。
今回ばかりはグズってって責められても仕方がない。
叱られる覚悟で謝ったんだけれど…
「こっちに来い…!」
乱暴に腕を掴まれ、キッチンの方に連れて行かれた。
そして、
「指、見せてみろっ」
有無を言わさず、わたしの手を握った。
「コーヒーかかったんだろ。火傷してないか?」
責めるどころか、晴友くんはわたしの指を心配してくれた。
指は今もジンジンしていた。
たぶん、火傷している。
でも、これはわたしがしっかりと接客できなかったせいで負ってしまった自業自得の痛みだ。
晴友くんに気にかけてもらうことじゃない。
「ん…大丈夫…たいしたこと」
「あるだろ?すげー腫れてる」
言うなり、晴友くんの手がわたしの指に触れる。
なんだか情けなくて、
「大丈夫!なんともないよっ!」
手を引っ込めて、熱湯で洗ったばかりで熱くなっているソーサーを運ぼうとしたんだけど、
「っ…!」
じん、と痛んで、思わず手を離してしまった。
「ったく…」と晴友くんが呆れた顔をした。
そして、氷をいれたボールに水を張ると、中に指をそっと入れてくれた。