イジワル先輩さま、ご注文は甘い恋で
けど、晴友くんはわたしを突き放すと、無かったかのようにぶっきらぼうに言い捨てた。
「いい加減、俺を困らせるのやめろって言っただろ。
今度こういうことがあったら、絶っ対に助けてやらないからな」
「…」
「おまえなんか、どうせいつまでたったって鈍くさい半人前なんだから、ヤバい時はおとなしく俺を頼ればいいんだ。わかったか、グズ」
晴友くんは棚の奥から軟膏を出すと、わたしのそばに投げ捨てた。
「あと10分冷やしたら、それ塗って今日はもう帰れ」
「…え…でも…」
「またコーヒーひっくり返して客にでもかかったらたまんねぇんだよ、バカ。わかったか」
いつものキツい言葉がグサグサ刺さってくる。
はい…としょんぼりうなづくしかないわたしを残して、晴友くんはさっさとホールに戻ってしまった。
さっきのやさしさは、ほんのちょっとのきまぐれだったのかな…。
わたしがあんましみじめだったから、さすがにと思って慰めてくれたのかな…。
というか…。
わたし…晴友くんに抱き締められた…?
ほんの一瞬のことだったけれども、
そのぬくもりは、たしかにわたしの肌に、心に残っていた…。
わたしと同じくらい高鳴っていたその胸の鼓動と一緒に、ありありと…。
うそ…。
これは、夢…?
かぁああ、と身体中が火照った。
指の痛みも気にならないほどに、熱く…。
わたし…
晴友くんに、抱き締められちゃったよ…。
どうして…??