イジワル先輩さま、ご注文は甘い恋で


「ごきげんよう、日菜さん」


「ごきげんよう」





放課後。


クラスの子たちのあいさつに返すと、そのなかのひとりがにこやかに誘ってきてくれた。




「わたしたち、これから三神さんのお家のお車で最近オープンして話題のお店に行くんだけど、一緒にどう?」




と、教えてくれたその店名は、フランスの一流ホテルで修業をつんだパティシエが作るスイーツが話題になっているケーキ店。雑誌で何度も紹介されている。

そういえば、お兄ちゃんも太鼓判を押していた。
うー行ってみたいなぁ。


けど…。




「あらだめよ。日菜さんはお忙しいのよ。
だって、アルバイトしているんですもの」


「ええ!?」


「アルバイト??」




みなさんはとんでもないことを聞いたかのように、眉をひそめあった。


わたしの学校に通う子のほとんどは、有名会社の社長さんや政治家、お医者さまといった裕福な家の方たち。

だから、わたしがアルバイトを始めたことにとても驚いている。




「どうしてアルバイトなんて?おうちになにかあったの?」


「そんなはずないわ!だって日菜さんのご家は全国に支店を数多く出している三ツ星洋菓子店ですもの」


「じゃあどうしてアルバイトなんてしているの?」




興味津々な視線が集まってきて、わたしは言葉に困る。

まさか「好きな人がいたから」なんて…恥ずかしくて言えない。




けど、みなさんはそれぞれの事情と照らし合わせて、いろいろと詮索を巡らしていく。
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