イジワル先輩さま、ご注文は甘い恋で
電車を何本か乗りついで着いたのは、わたしたちの年齢の子たちのお買いものスポットと人気がある東京のとある地域だった。



実はわたし、ここに来たのは初めて…ううん、こうして自分の足で来たのは初めてだった。

にぎやかな雰囲気、可愛いお店の数々に、人、人、人…。

車の中で見るのとちがって、なにからなにまで新鮮だ。


あちこち眺めながら歩いていたら、晴友くんが隣に来た。




「おい日菜…。なにさっきからキョロキョロしてんだよ。
まさか初めてってことはないだろ?」


「え…あ、うん…実は、自分で来たのは初めて…。いつもは、お車に乗せて連れて来てもらってたから…」


「親父さんの?」


「ううん。お父さんの部下の方に…」


「……」




あれ…晴友くん、黙っちゃった。




「…ちゃんとついて来いよ。
迷子になっても捜してやらないからな」


「は、はい…」




そうして、ちょっと歩く速度をゆるめてくれる晴友くん…。


道は行き交う人で一杯で、ぶつかったりしたらすぐ三人とはぐれてしまいそうだったけれど…

大きな身体は、ぴったりとわたしの隣についてくれた。



こ、これは、デートじゃないぞ。



そう自分に言い聞かせるけど…ドキドキしてつい浮かれてしまいそうだった。








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