イジワル先輩さま、ご注文は甘い恋で
「ほんとだ、腫れはもうひいてるな…」
ほんとはまだすこしヒリヒリしたけれど…
それ以上に、晴友くんのその動きに胸が痛いくらいに締めつけられる。
「ね…だから大丈夫だって言ったでしょ…?」
これ以上つかまれるのが辛くて、わたしは少し強引に手を引っ込めた。
晴友くんはすこし気まずそうに言った。
「おまえは半人前の癖に無理し過ぎるところが生意気だからな。
まだ無理するようなら怒っていたところだぞ」
そう言うけれど…
その言葉には全然悪意が感じられなくて…
わたしはふと、さっき買い物途中で美南ちゃんに言われたことを思い出した。
『ごめんね、せっかくバイト休みなのに付き合わせて。
晴友がどうしても連れて行けってうるさいからさ。
もう、ほんとあいつ、日菜ちゃんにイジワルしたくて仕方ないみたい』
そう言って美南ちゃんがくすりと笑ったのが不思議だったけど、今、解かった気がした。
晴友くん、本当はわたしの気を紛らわそうと思って、買い物に連れ出してくれたんだね。
わたしが自分のドジを落ち込んでいると思ったから…。