イジワル先輩さま、ご注文は甘い恋で
「ね、晴友くん」
「ん」
「指ももう平気だし、その荷物、少し持ってあげようか」
わたしは晴友くんとわたしの間に置いてある荷物を指差して微笑んだ。
「は?いいよ、こんなの重くないし」
「だって美南ちゃん言ってたんだもん。『晴友はケーキに対して以外は乱暴だから、荷物を持たせるのが不安』って。だから、これはわたしが持ちます」
と、荷物を膝の上に乗せると、わたしは少し晴友くんとの距離を縮めるよう座りなおした。
「…ったく。…そういう所が生意気だって言うんだよ」
と、ぶっきらぼうに言うと、晴友くんは諦めたように溜息をついて、そして、ちょっと口端を上げた。
わ…
晴友くんが…笑った…。
わたしに笑ってくれた…!
それは、ほんの10センチ程度の距離。
でもわたしには、とってもとっても大きな前進だった。