イジワル先輩さま、ご注文は甘い恋で
あと、ほんの少しの、距離
晴友くんはどんどん先に行ってしまう。
わたしよりずっと足が長いし、いつも動きはキビキビして速いし…それに帰宅ラッシュと重なって、人がさらに増えているから見失いそうになる。
待って…!
って叫びたくてもできない…。
晴友くん、晴友くん…!
そうしたら、念じたのが届いたみたいに、くるりと晴友くんが振り向いた。
良かった…!
とほっとしたのも束の間、横断歩道からやってきた集団に阻まれてしまう。
わーん、晴友くーん!!
思わずぴょんぴょん飛び跳ねる。
集団が通り過ぎると、晴友くんが呆れた表情を浮かべて、そばに来てくれた。
「…ったくなにやってんだよ、グズ」
「ご、ごめんなさい…!晴友くん足が速くて…。それに人も多いから…」
「まぁ、確かにこの時間じゃな…」
晴友くんは溜息まじりにあたりを見回した。
そして、
「仕方ねぇな…」
と、乱暴にわたしの手を握ると、歩き出した。