イジワル先輩さま、ご注文は甘い恋で
「でも、あのお店高いでしょ…?
わたし今そんなにお金持ち合わせていないから、もうちょっと……あ、あれがいいな…!」
と指差したのは、クレープの販売車だった。
アメリカから進出してきた店で、けっこう人気があるけど、高校生の定番スイーツってカンジで珍しいもんじゃ…
「わたし、ああいうスイーツ食べたことがないの…!お買い物帰りに立ち寄るとか憧れだったんだ」
なるほど…。
「…じゃ、あそこにするか」
「うん!」
日菜が注文したのは生クリープとバニラたっぷりにプリンとナッツにチョコレートソースまで入ったごちゃ盛りクレープ。
俺はさすがに、とベーコンやレタスが巻かれたものにした。
甘いものを詰め込んだだけの胸焼けするようなクレープを、日菜はすいすい食べていく。
「美味いか?」
「うん!なんか、こういうスイーツもいいね!楽しい!」
なんだか、日菜が客として来ていた頃を思い出す。
よくこんな風に店のスイーツを美味そうに食ってたっけ。
小さな口いっぱいに頬張って、一口一口本当に幸せそうでさ。
仕事してても、どうしても気になって見てしまって、
初めて女を『可愛い』って思ったんだよな…。
それを、今はこうして目の前で楽しめるなんてな…。