イジワル先輩さま、ご注文は甘い恋で
にっこり笑う日菜に、胸が大きく高鳴った。
こいつ、ストレートに言い過ぎじゃねぇか…?
働いている時もそのくらいペラペラ言えっての…。
もどかしい気持ちを抑えきれず、日菜を見つめた。
こんなに深く見つめたのは初めてかもしれない。
小さな顔。小さな鼻、唇。
なのに目はクルミみたいにおっきくて、頬はストロベリーがにじんだミルクみたいに、ほのかに赤い。
まるでスイーツみたいだ。
繊細で綺麗な、この世にふたつとなく甘い、特別なスイーツ。
俺は無意識に、その唇に指を伸ばした。
そして、戸惑って開いた唇をなぞった。
アイスクリームに濡れた唇は、やわらかくて冷たくて、チェリーみたいだ。
キス、してぇ。
「…ケーキだけか?」
「…え」
「おまえが好きなのは、俺が作るケーキだけなのか…」
「晴友…くん…?」
そんな唇で、そんな甘い声で呼ぶなよ。煽ってんのか…。
唇の隙間に指先を入れると、薄い眉がひそめられる。
怯えるよう目を潤ませて見つめてくる表情が、死ぬほど可愛いくて…もっと怯えさせたくなる。
その顔は…やっぱ…煽ってんだよな。
もう、そういうことにしていいか。いい加減セーブがきかねぇ。
おまえが俺をこうさせたんだぞ。
イジワルしかできない不器用な俺を、そんな純粋な目で見つめてくるから。
気持ちが抑えられない。