イジワル先輩さま、ご注文は甘い恋で


「こんなところに晴友に会えるなんてっ!!」



カンナはロケバスからあっという間に出てくると、勢いよく俺に飛びついてきた。


このハプニングに、残念そうに帰ろうとしていた野次馬たちが気づいて俺たちの周りを囲んだ。

けど、カンナはお構いなしだ。




「元気だった?晴友っ?」


「ひっつくなよ!みんな見てるだろっ」


「だって、ちょーうれしいんだもん!」




と抱き付くカンナ。

おおお!と野次馬から興奮した声が飛ぶ。

こんなことして立場的に大丈夫なのか!?…ってんなことよりも…!


日菜を見た。


日菜は困惑気な顔をしながらも、ぎこちない笑顔を作った。




「…わぁすごい晴友くん…カンナちゃんと知り合いなの…?」




カンナはまじまじと日菜を見つめると、やたらわざとらしい大声で言った。




「知り合いもなにも、私、芸能界入りするまでは晴友と付き合ってたのよ」


「お、おい!?」


「えーだってそうじゃない!」




日菜の顔から笑顔が消えた。

俺は悲鳴に近い声で否定した。




「ち、ちがうぞ日菜!こいつはただの幼馴染だ」


「ひっどーい晴友ってば!祥子ちゃんに鍛えられながら苦楽を共にして、あーんなにラブラブだったのにっ」


「はぁ!?お前、さっきから嘘ばっかり並べ…」




先を言わせないように、頬に温い感触があたった。


おおおと歓声がさらに高まる。

カンナが俺の頬にキスをしやがった…!
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