イジワル先輩さま、ご注文は甘い恋で
けど、ぐいと乱暴に引き寄せられ、ドンっと背中にひんやりと硬いものが当たった。
コンクリートの壁に押し付けられていた。
思わず見上げると、真っ直ぐに見つめてくる鋭い目と出会った。
「なんで、そんな泣きそうな顔してるんだよ…」
「……」
「そんな顔されたら…勘ちがいしちまうだろうが…。
…もう、勘ちがいはイヤだってのに…」
どういう、意味…?
晴友くんは苦しげに眉をゆがめたけれど、ふっとまた真剣なまなざしになった。
「…もういいや」
え…?
「もういい」
きっぱりと言い切った晴友くんのその目に、わたしは囚われたかのように目をそらせなくなる。
胸が痛んだ、きゅっと強く、強く。
「日菜。俺は…ずっと、ずっと前から…」
その時だった。
「日菜…!」
雑踏に混じってわたしを呼ぶ声が聞こえた。
かと思うと、次に目の前で信じられないことが起こった。
バシィッ!!
にぶい音が聞こえて、晴友くんが、殴り飛ばされたから。
男の人に―――ううん。
「お兄ちゃん!?」