イジワル先輩さま、ご注文は甘い恋で
あまりにひどい言葉。
晴友くんがどれほどお兄ちゃんに憧れているかも知らないで、勝手に決めつけて…。
尊敬する人にこんなことまで言われて、晴友くんはどんなに傷ついたか…。
わたしは生まれて初めて、お兄ちゃんに怒りを覚えた。
晴友くんは、下を向いたままゆっくりと立ち上がった。
無視してお兄ちゃんはわたしを連れて行こうとした。
けど。
「…ちょっと過保護すぎるんじゃないすか。
あんた、日菜の気持ち、一度でも考えたことあるんすか?」
静かな、けれども強い気持ちを込めて、晴友くんが言った。
「正直がっかりだ。こんな独りよがりのきめぇ人だとは思わなかった…」
「…なんだと?」
「本当に大切なら、独り立ちしたいって思う日菜に気づいて、見守ってやるべきなんじゃないすか?」
「…生意気言いやがって…!」
逆上したお兄ちゃんが、晴友くんの胸倉をつかんだ。
すぐに逃れられたはず。
けれども、晴友くんはされるがまま、歯を食いしばった―――。
「やめてっ!」
とっさにわたしはお兄ちゃんに飛びついていた。