イジワル先輩さま、ご注文は甘い恋で
「もうやめて…!晴友くんにひどいことしないでっ!
…ごめんなさい、全部わたしが悪いの…。今日はもう帰ります…。帰って罰は受けるから…」
「日菜…」
泣きそうになるのを必死にこらえながら言ったわたしに驚き、そして涙を浮かべたのは、お兄ちゃんの方だった。
「俺の日菜が…変わってしまった…。
俺より、こんなどこの不良かもわからないような男をかばうなんて…」
お、お兄ちゃん…!?また感情的に…!
「な、泣かないで…。本当にごめんなさい…。けしてお兄ちゃんを悲しませるつもりはなかったの…」
ハンカチを差し出し、歩くのもままならないほど泣き濡れているお兄ちゃんの手を取る。
駅の近くに停まっていたお兄ちゃんのBMWにむかいながら、なかばポカンとなっている晴友くんに振り返った。
「晴友くん…ごめんなさい…」
「い、いや…。俺の方こそ、悪かった…」
にっこり微笑んでみせ、まだ何かいいたげな晴友くんに後ろ髪ひかれる想いを感じながらも、車に乗り込む…。
お兄ちゃんといい、カンナさんといい…
近づきつつあったわたしと彼との距離は、遮られようとしていた…。
車の窓を見ると、晴友くんがまだ立っていた。
わたしを見つめてくれるその姿は、車が加速するにつれて、どんどんどんどん遠くなっていった…。